暇潰し備忘録

気まぐれに更新する何でも日記

小説の宣伝と裏話。

小説家になろう」にて、短期集中連載していたお話が完結いたしました。

短いお話故に執筆中の感想も何もかもネタバレになってしまうので、全話投稿し終えるまで宣伝を控えておりました。

 

という事で、ネタバレ解禁、全話制作裏話もりもりでお送りします。

まだ読んでいない方は下記リンクからどうぞ。全15話、さほど長くないので一気読みも簡単です。

タイトル「君が死ぬまでの話。」ガールズラブ要素を含みます。

https://ncode.syosetu.com/n5832gz/

 

 

 

 

 

 

では、読んでいただいた前提で、さっそく裏話をしていきましょう。

 

この作品を書き始めたのは、自分の中で心の整理を付けるためです。

彼方のモデルとなったのは、我が家の飼い猫。生まれつきFIV(猫エイズ)陽性、無症状キャリアでした。親が半野良だったためで、野良猫にはよくある事で、すぐに死んでしまう子もいれば寿命を全うするまで発症しない子もいると説明は受けていました。

この話の一話を投稿する一ヶ月程前から、飼い猫が体調を崩し始めました。食欲が落ち、目やにが増え、口内炎を発症しました。医者で薬を注射されましたが、症状を抑えるだけで治りはしませんでした。

診断はFIV関連症候群。まだ発症までにはいかないものの、これらの症状は根治する事はなく、発症した猫の寿命は長くない。

愛猫は八歳。ペットの平均寿命が年々伸びるこのご時世で、随分と短い、そう感じました。

それから、定期的な病院通いが続き、調子が良くなったり、悪くなったりを繰り返し、いつ尽くす手が無くなるかといった状況で。熱が出て、三日も何も食べなくなった時は、死も覚悟しました。

覚悟した、と言っても、気持ちは落ち着かなくて。文字にして吐き出したい、と思って出来上がったのが一話。

昔から作文が苦手でした。自分の視点から物事を書こうとすると筆が進みませんでした。でも、何故か小説は書けました。自分の気持ちを、別人に代弁してもらうと、すらすら書けました。

一話で小とりが考えている事は、ほとんどそのまま自分が思っていた事。この時点では、彼方と小とりは、猫と自分を投影した姿でした。

 

作中に登場する謎ファンタジー設定ですが、基本的にはフレーバーです。

FIV発症から一ヶ月持たない、という情報を見まして、人間が余命一ヶ月ってどういう状態だ? という辻褄を付けるためどこからかポンと出てきた謎の設定の数々。後から普通の実在する病気でいいじゃん、と自分でも思いましたが、話の重さ的にリアル感増すともっと重くなるのでこれでいいやと(医学知識の無さが露呈した結果でもあります)。

本作内においてはそれはもう完全に「深く考えなくていい」案件なので。もし続編が出たら掘り下げられる程度なので。

 

で、一話段階ではリアルな気持ちを書きなぐっていただけだったのですが、二話から登場人物の掘り下げが始まります。

この子達はどんな過去を持って、どういう考え方をするのか。彼方が猫から人になった頃です。

彼方の台詞は、自分が言ってほしい言葉を言わせている形になります。迷っている部分を、向こうから確定してほしい、という理想を叶えて貰ったわけです。

でも、その考えに至るまでには、どんな辛い過去を歩んできたのか。フレーバーさんがお仕事をした部分です。

 

一、二話で大体話の雰囲気が出来上がって。この段階で、物語の全体像を構築し始めます。

初期段階で決まっていたのが、結婚式回と最終二話。タイトルの時点で彼方の死と、小とりの立ち直りを描く事は避けられない決定事項でした。

次に、彼女達が死ぬまでにやりたい事は何か、デートだよな! となりまして、デートの足を手に入れる回含め四話分が追加。

最終話に必要な回として、遺言書作成回が発生。

猫が発熱したので、発熱回を追加。

ここまで来て、個人的に切りの良い話数で終わらせる予定だったのが、十話をオーバーし十五話編成に。

そうだ、アルバム作ろう、と思って一話追加。

やりたい小ネタとして、目覚めのキスと停電回追加。

 

一話、完全ノープランで書いたのが、十三話になります。

この回は作者の想定を完全に飛び越えた良い回になりました。最初から必要であったかの様な内容の充実っぷり。そしてこの回のせいで、最終二話を書くのがしんどくなりました。

こんなに愛し合ってる恋人達を本当に引き裂くのか…お前は悪魔か…と自問自答しながら書いていました。でも駄目です、いつか必ず死はやってくるのです、モデルがモデルだけに二次元だから回避は許されないのです(と自分に言い聞かせていました)。

 

三話頃から、二人がはっきりとした自分の意思を持って動き始めました。言わせていた台詞が、考えていた台詞が、勝手に彼女達の言葉に変更される事が多々ありました。

当初の予定ではもう少しセンチメンタルな雰囲気になるはずだったのですが、こんなに楽しそうにしてるのに水を差したくないな、と描写を控えた箇所がいくつもあります。彼方の性格が明るかったのと、小とりも嫌な事を忘れて楽しんでいたせいですね。

実際自分も、泣きたくなるのはふと死を意識した瞬間だけなので、楽しい時は素直に楽しんでいていいのではないかと思います。

 

泣きながら書いたのが、一、二、九、十、十五話。前半は前述したとおり。後半は、全部彼方に泣かされました。もうこの時点で、出てくる言葉は作者のものではなく、彼方が自分で考えて書いたものになっていました。手紙の中には見る度に泣く個人的琴線ワードが含まれています。読み直すの辛いです。自分でも何で泣けるのか分からないけど泣けてきます。

 

最終話について、言い訳というか、特筆しておきたい事がありまして。

 

「君が死んでも、何も変わらない」

 

この部分、ネガティブな受け取り方と、ポジティブな受け取り方があると思います。作中では一見ポジティブにしようと努力している様子が見られると思いますが、ネガティブに受け取ってほしい場合があります。

自殺を考えている方。自分が死ねば、周りが変わる、なんて考えている方。

家族くらい親しい関係なら、まあ変わる事もあるでしょう。でも、世の中の大半は変わりません。

他人任せにしないで、生きて世界を変える努力をする方が、よっぽど可能性があると思うのです。

小とりも、ネガティブな方を強く意識しているところがあります。わたしが死んでも、彼方は戻ってこない。あの世で会える保証もない。何も良い方には転ばない。根が暗いので、立ち直ってもそんなにポジティブにとはいきません。

 

それでも、それでもと言い続けろ、と誰かが言いました。

色んな理由で、死にたくなる事は、きっと誰にでもあります。

そんな時に、「生きて」と言ってくれる人がいれば。

この作品が、そんな人の代わりになって、誰かに生きる理由を与えてくれれば。

 

そう思いながら、この物語を締めくくりました。

閲覧数はまだまだ全然伸びませんが、評価が付き始めて、読んでくれている人はいるのだなあと実感しています。

続編ですが、イメージがあるだけでまだ何も決まっていないので、いつ書くかはわかりません。無いものと思ってそれぞれ二人の今後を想像していただければ幸いです。

ちなみにイメージですが、小とりは再び現れた『混沌』との戦いに、「もう何も出来なくて後悔したくない」と自ら飛び込んでいきます。

一方の彼方は、異世界転生して恋愛以外をエンジョイ。対照的な雰囲気の話になりそうです。

 

我が家の猫は現在、良くなったり悪くなったりを繰り返しながらも、無事に生きています。もしかすると連載中に死んでしまうのでは、と思いながら書いていましたが、そんな事はなく、最終回の気持ちは想像のものとなりました。

猫があの世に旅立った時、小とりと同じ結論が出せるかどうか、とても不安に思っています。けれど、この作品が自分の心の支えになるように、そう願ってもいます。

残された時間を、出来る限り一緒にすごそう。それが、唯一出来ることだから。

 

最後に、イメージイラストと、作中では必要なくて省いた「彼方の『天仕』としての戦い方ってどんな感じ?」という内容のショートストーリーを添えて、締めくくろうと思います。

雰囲気は違いますが、なろうに投稿している別作品もお読みいただけると嬉しいです。

では、また(・ω・)ノシ

 

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・ボーナストラック、ある雑談
 彼方の死が新聞に掲載された日。
「『レーザービーム』が死んだか……奴は我ら四天王で最強……」
「桁違いの最強だったし、四天王はお前の自称だからな」
「あれ以来『混沌』も出てこないし……一時代が終わったって感じがするね……」
「あの、竹丘彼方さんが、最強って呼ばれてた理由って……?」
「そういえば、新入りはあいつが戦ってるとこ見た事ないのか」
「彼の者の力は、闇を射抜き消し去る浄化の光線。これを食らい生き残った『混沌』は存在しない」
「超遠距離範囲射撃が特徴だったの、確か全世界の『天仕』と比べても最長だったはず」
「あいつの援護射撃が頼りだった、と言いたいところだが、あいつに確実に打たせる為にオレ達が前衛してたって感じだったな」
「我等が力は撹乱、防衛に適性が高い。『レーザービーム』との相性の良さ故に四天王結成と至った」
「近場の『天仕』が倒せなかった『混沌』が出た時、よくセットで出撃要請出されたんだよな。そのせいで他の奴らより仲良くなっちまって……同業に情は移さない様にしてたんだがな」
「アタシ達より先に、彼方がいなくなるなんて、考えもしなかったね……」
「……我は、最期の戦いの地にて、何一つ成し遂げられなかった」
「火力無えからな俺等。……それにしてもまあ、あん時は役立たずってレベルじゃなかったが……」
「止めて、また夢に見るでしょ……」
「……なんか、ごめんなさい……」
「お線香あげに行ってもいいのかなぁ、アタシ達にそんな資格あるのかなぁ……」
「行くに決まってるだろ、泣くな煩い、新幹線の座席三人分予約するからな!」
「我の分は要らぬ……合わせる顔等無い……」
「お前らは揃いも揃ってめんどくせえな! 仲間を見送るのは生き残った奴の責務だろ!」
「あわわわ……おっ、落ち着いてください……」
「新入りはすっこんで――ごっ」
「うぐっ!?」
「びゃっ」
「落ち着いて……話し合い、しましょう?」
 『圧』によって床に押し付けられた三人は、唯一人立つ小柄な少女に向かって、必死の表情で頷いた。

 ――彼等と小とりが出会うのは、まだ少し先の話。