暇潰し備忘録

気まぐれに更新する何でも日記

考えて上達させるイラストテクニック

お久しぶりです。

前々からお絵描きの解説記事書きたいなと思っていたのですが丁度いい題材を見つけたのと、人に見せても恥ずかしくないと自負できる程度の画力になったので今回は初級~中級程度のイラストテクニック講座です。

お絵描き暦はデジタルで十年程度。しかし自分、筆が遅いのです。絵は描けば描くほど上手くなると言われていますし、実際そうなのですが、遅筆だと描ける枚数が他の人より少なくなってしまいがちです。

という事で、今回は「少ない回数で絵を上達させるやり方」を紹介していこうと思います。
我流ですが偉大な先人の方々からの借用を多様に使用しますので論理的に…分かり易く…なると良いなと思っています。


ちなみにですが、小ぢんまりと有償で絵の依頼受け付けております。納期未定の変わりに友達価格。ツイッターのDMでコンタクトを取ってください、気付いたら返信します。


0・解説開始前に

まずはこちらが完成品です。

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今回描くのはTwitterのヘッダー。季節外れですが諸事情で夏用のものになっています。
ここを目指して全工程を解説、なのですがその前に使用ソフトの説明を。

自分が愛用しているのはFireAlpaca(ファイアアルパカ、燃えパカ)というPC用フリーソフト。完全無料で有料ソフトと遜色ないレイヤー機能、フィルタ、加工機能を備えた素晴らしいお絵描きソフトです。特にブラシ設定がPhotoshopに近く同じブラシ画像を流用する事で近いタッチが作れるのが魅力。ただブラシは自由度が高すぎて作り出すと終わらなくなるので程々に、良く使う物を見極めましょう。
アップデートが多く頻繁に最新版をダウンロードさせられる事が唯一の欠点ですが、ものが素晴らしいのでこれくらいは我慢の範疇です。

スマホで描く場合に使っているのはibisPaint(アイビスペイント)。こちらは広告除去とブラシ解放の為に微課金がおすすめです。何と言っても魅力的なのが豊富なブラシパターンとテクスチャパターン。タブレットでもない限りパソコンの方が描きやすいのですが、パソコンだとフリー素材を探してダウンロードして…という手間がかかるので、アイビスに良いのがあればこちらで一部素材を作ってパソコンに持って行く、という事がよくあります。図形や無機物を描く時は燃えパカより使いやすいかもしれません。


今回は横長という画像サイズもあり全てパソコンで作業しました。
という事で本題にまいりましょう。

1・構図を考える

Twitterのヘッダーの特徴と言えば中々見慣れない超横長のキャンバス。そして実際に表示される時に重なるアイコンの位置も考慮しなければなりません。
構図についてあれこれ悩む前に、まずはどんなものを描きたいかイメージを出しましょう。

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ざっくり下書き。飲み物、季節の花、窓という構図を描きたくて構想、人も欲しかったので手だけ追加。萌えが足りないけど元々無機物描き込むのが趣味なのでよし。春夏秋冬用意する予定ですが、今回は一番袖口がシンプルな夏バージョンで進めます。

ここから見栄えを意識して構図を練っていきましょう。感覚だけで配置が出来るなら良いですが、苦手な自分は頭を使います。
まずネット検索で同じサイズの画像を検索、たくさん眺めて好みの構図をぱく、参考にパーツの配置を移動します。ヘッダーサイズに近い絵画は
・右単体、左単体に目立つモチーフ、反対側へ下がって行く、上がっていく坂
・真ん中に目立つモチーフ、両脇に木々や山や壁
こんな構図が多い様に見受けました。

主役を意識して並べ替え、気に入ったらそこで終了で良いですが、まだ何か気になるという方は次のアイテムを使用します。

黄金比
白銀比
・青銅比

名前は有名ですので知っている方も多いでしょう。美しく見える比率TOP3です。
使い方は簡単、この名前で調べると分かり易い図形画像が出てきますのでダウンロード、自分の絵に重ねます。上の物ほど美しいので出来れば主役付近は黄金比に当てはめたいところ。ですがヘッダーサイズに一番近いのは青銅比なので、これだけで構図を決めても構いません。

今回は折角なので無理やり三つ全部入れ込んでみました。

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本当に無理やり感が凄いですが、初期構想から比べると見栄えが良くなった気がしませんか? 小物で誤魔化してる? 誤魔化せるなら良いんです。

別レイヤーで重ねた比率ガイドたちを出したり消したりしながら、隣で資料検索した実物と睨めっこして線を少し整えていきます。下書きは丁寧な方が後々の作業が楽になります。が、時に完成品が下書きを越えられない問題が発生するので描き込みすぎには注意。
逆に下書きをそのまま綺麗にごみ取りして線画にする方法もあるので、そこら辺はお好みで。

構図が決まったので、次の作業に行きましょう。

2・塗り分け

地道作業の代表格、塗り分けさん。今回はイラストテクニック本で読んだ面白い描き方で線画を出すので地道作業を一つ飛ばしてこちらの作業に入ります。

パーツ毎にちまちま塗り分け。下書きの気になった部分をここで修正しても良いです。というか雑に下書きするとここで修正せざるを得ません。いつもは線画作業で泣かされるところですね。

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最初は分かり易い色…黄緑、ピンク、オレンジ等で塗り分け。この時隣接する色は「補色」に近い色にすると見やすいです。

☆補色(ほしょく)とは
色相環(しきそうかん)と呼ばれる円状の色の相関図において正反対の位置に存在する色の事。正反対という事は並べると強いコントラストになる色という事。やってみると分かる、こんな色の縞々の服着たら絶対目立つ。

不透明なペンと消しゴムでゴリゴリシルエットを整えていきます。この時にパースの乱れも何となく修正、なのですが自分空間把握能力の欠如のせいかうまくパースが取れないので何となくの見栄えでやっています。基本的にネットで検索した資料画像と睨めっこですが、同じ角度の写真をピンポイントで探すのはほぼ無理なので、視点の高さを考えてリアルで目の前に物を並べて角度を理解するのが一番早い、かなと思っています。

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ここでそういえば麦茶だこれ! 小物がミルクピッチャーだとコーヒーにしか見えねえ! と気付き慌てて冷水ポットに変更。あとついでにアサガオのレイヤー分けが分かり易いように色を変更(元々別々だった)。
本当ならアサガオのガクとかポットの蓋とか色分けしておいた方が良いのに何とかなる(する)で手抜きしています。本当に…出来る限り細かく分けた方が…後々楽だぞ…。
ですがレイヤーの枚数はパソコンのスペックと自分が管理できるかどうかで調整しましょう。画像サイズが大きくなる程1レイヤー増やした時の処理が重くなるので厚塗り風を強制される事も…。技法は一つに拘らず色々工夫して混ぜるのが良いです、いざという時の為に(切実)。

3・塗り込み

塗り分けしたパーツを塗り込んでいきます。押さえておくポイントは

☆光源を意識する事

これに尽きます。どこからどの向きで光が当たっているか、先ずはそれだけを考えて影を落としていきましょう。
その後に付けるのが、物の形で出来る影。この時先程影を落とさなかった場所には出来る限り描き込みを増やさないようにします。デジタルイラストは光と影のコントラストを強めに付けた方が綺麗に見えると思うので、写真の白飛びのような演出をわざと採用するのもありです。

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「ね? 簡単でしょう」、みたいになっていますが全然簡単ではありませんでした。塗り込み工程だけで丸二日掛かっています。ただひたすらに資料画像と見比べながら塗りを追及する地味な作業でした。
ここで大事なのが

☆資料そのままにしない事

見たまま描くと、「雰囲気が出ない」「食べ物、飲み物が美味しそうに見えない」という現象がよく発生します。不思議ですねえ、自分も不思議に思います。
イラストというのは写実的に描きたいのではなく、「世界観を描きたい」のだと思います。最終的な雰囲気づくりは最後の工程で行いますが、色付けの段階である程度描き込んでおいた方が加工も楽になります。

何か違うなあ、をクリアする為の予備知識として、

☆色にはそれぞれイメージがある事
☆全ての色は単色ではなく複数色の混ざりで出来ている事

を意識してみてください。
色のイメージというのは簡単に言えば赤は熱い、青は涼しい、といったもの。直接的に小物の色としてイメージ色を追加するのも良いのですが、それだけではなく「反射光」のように隣接する物体にも同色を「オーバーレイ」で塗り足しておくと画面にイメージ色を増やす事ができ、統一感が増します。
また、「空気感」の作り方として光(ハイライト)をクリーム色、影を紺色、遠いものには空気の層をイメージして水色をオーバーレイで重ねる方法があります。更にコントラストを強くする事ができ、情報量も増えます。一般的にオーバーレイレイヤーの透明度は5%から10%程度ですが、個人的には15%や25%、場合によっては50%を使用する事もあります(塗り込みが甘いせいだったりしますが)。

オーバーレイの使い方として、全く別の色を自然に重ねられるメリットがあります。これが「一色を複数色で作る」方法です。
のっぺりとした部分にエアブラシで原色に近い紫やピンク、オレンジ、黄緑等々思いのままに足してみましょう。そしてオーバーレイにして、限りなく透明度を下げます。正直何が変わったのかよく分かりませんが、レイヤーを表示したり非表示にしたりしてみてください。何か深みが出た気がします。
このようにして情報量を増やしていく事で、豪華に見える絵に進化させていくのです。

塗りは影の位置という基礎さえ出来ていればいくらでも誤魔化せるんじゃあ! と思ってもらって大丈夫です。頑張って盛りましょう!

4・線画作成

本来なら2番目になる筈の工程です。今回の技法の目玉工程です。
塗り込んだレイヤーを念の為複製してから統合します。統合したレイヤーを複製して三枚にします。

コピーした二枚のレイヤーの片方を除算に、そして拡大縮小します。するとあら不思議、色のズレた部分が線として浮かび上がるのです。

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これを線画抽出、好みの濃さに調節して出来上がるのがこちら。

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何となく色を変えて線画完成。本当ならごみ取りしたいところですが面倒だったので今回はなし。
多分拡張にすれば縁取りは出来ないのですが、この枠があるのも雰囲気あって良いなと思ったので縮小を採用しました。

これを乗算にして、塗りレイヤーと重ねるとこうなります。

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あの面倒くさい線画工程が一瞬で終了、若干水彩境界風にもなる、面白い技法ですねえ。

という訳で、次が最後の仕上げです。

5・仕上げ

ほこり風の粒子以外はオーバーレイ祭りです。
加工前と完成品を並べてみると違いが分かると思いますのでもう一度掲載。

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ちょっと柔らかく明るくなりました。ちゃんと覚えていないけれど白と水色を重ねた筈です。夏なので寒色系で整えました。

仕上げはほぼ感覚、その人の理想に近づけるために好きにするものなのであまり解説出来る事はありませんが、別レイヤーを足してスポイトで色を取って上から加筆、修正も出来ますし、どんな状態になってもデジタルでは「手遅れ」はありません。頑張ってこだわって、納得のいく完成を目指しましょう。

6・反省会

遅筆絵描きにとって最も大事な工程です。

自分の絵に対して不満があるか?
あるならばそれはどこか?
どうしてそこが気に入らないのか?

これをはっきりと洗い出す事で次へと活かす、それが「描く枚数が少ない人」の上達方法なのです。
誰にでも理想の絵柄があります。本当に描きたかった世界があります。それをイメージの段階に留めておくのではなく、きちんと言語化、具体化しましょう。

今回の絵で言うならば…面倒くさくて放り投げた葉脈、スカートの皺、線画抽出時に出たエアブラシの跡を消さなかった事、ですかね。あと最初の構想と違った部分と言えば主役だった筈の花(アサガオ)が暗めになってしまった事で主役落ちした事でしょうか、これは配置ミスなので今回はどうにもなりません、次に活かしましょう。

昔はアナログで気に入った絵を模写しては目の大きさが違うだの顔がでかすぎるだの反省会したものですが、おかげで最近はそこまで気にならないバランスが取れるようになりました。

線画の上達を目指すならアナログで鉛筆とノートで練習

塗りの上達を目指すならテクニック集(本でもネットでも可)を読み込んでその後実践

少ない手数で上達するには絵を描いていない時間も有効に使う必要があります。暇な時間があれば観察と分析を行いましょう。実践は時間がある時にまとめてやります。
とはいえ今はスマホでもお絵描きが出来るので、暇さえあれば描いて、という事も簡単に出来るのですが。

皆さんも「何も考えずに描く」のは止めて、「たくさん考えながら描く」という事を一度やってみてください。次に描いた時目に見えて上達が分かるようになる、かもしれません。



という事で、今回のお絵描き講座…になってたかな? 加工以外技術的な説明が何もない気がしますがお絵描き講座は終了です。お付き合いありがとうございました。
ちなみに普段はこういう絵柄のイラストを描いております。

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いつも通りの描き方での講座もしたい、のですが普通の事しかしていないのと工程のスクショ忘れがちなのでどうしたものかなあと思っております…。
そして遅筆はいつまでも治らない。マイクラの方はバージョン変更に伴う再建築&必要イラストの作成でお待たせしております。まだまだ小説が立て込んでいるので気長にお待ちください。

それでは雑談もこんなところでおしまいにしましょう。ペンだこと腱鞘炎に気を付けて、適度にお絵描きしましょうね。

では、また(・ω・)ノシ