暇潰し備忘録

気まぐれに更新する何でも日記

愛猫が死ぬまでの話。

11月5日と6日の日付を跨ぐ頃、愛猫が虹の橋の麓へ旅立ちました。
以前別の記事で闘病中である事を少し話しましたが、今回は一記事丸っと使って心の整理と情報公開をさせてもらおうと思います。


猫の名前は鯖、雑種のキジトラのメスです。サバトラではありませんが、魚の名前を付けたくて語呂の良いサバに落ち着きました。正確には漢字表記なのですが、親曰く動物病院の受付で名簿に名前を書く時、周りが可愛い名前ばかりで恥ずかしいからひらがなで書いていたそうです。今記事でも紛らわしいので基本ひらがな表記で進めます。

さばは自分の初めての飼い猫でした。昔から猫好きで、散歩に出ては近所の猫を眺めてくる日々を過ごしていたのですが、そんな様子を見かねた祖父が「親戚の猫が妊娠中で生まれたら貰う事になってるから」と突然報告してきて、あれよあれよという間に飼う事に。

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家に来たばかりの小さば。この頃はまだ足が短い事は…猫に囲まれて育った親は気付いていましたが、それ程目立たなかったのだ…。

さばの母猫は少し赤みのあるキジトラ。半野良猫で父親も恐らく近所の半野良です。何度も妊娠、出産を繰り返して来たベテランお母さんでしたが、この頃は高齢出産でした。
3匹の赤子が生まれたものの2匹は死産。1匹だけ生き残っていたのがさばなのですが、少し未熟児の傾向がありました。ただ、貰われる事が決まっていた子猫は親戚の手厚い介助を受けすくすくと成長。余談ですがこの時の癖で人と一緒の布団で寝る様になりました。

乳離れの頃に我が家にやってきて、家中で悪戯をして、粗相をして、脱走をして。この頃には自分は不登校になっていたので、さばが寝る時以外は一日中遊び相手をしていた記憶があります。

問題が発覚したのは、初めての動物病院。血液検査でFIV、猫エイズの陽性反応が出ました。母親からの胎内感染だろうという事でした。
しかしFIVキャリアの猫にも発症せずに天寿を全うする子もいるらしく、どうなるかは猫次第。ひとまず、今は何も症状が出ていないから大丈夫、という事でした。あとついでに、この時先生に「足短いね?」と言われました。あるぇー? マンチカンは混ざってない筈なんだけどなぁー?

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襲い掛かられている時の写真。大体この後くらいに避妊手術をした筈なのですが術後の写真が見つかりませんでした。親のスマホの方かな…。

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お見合い写真、からの犯行現場。さばは自慢の美人でしたが気が強くお転婆でした。キジトラは山猫と近い血を持っているので野性味が強いのだとか。

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大分大きくなって、我が家のお姫様として君臨している状態です。家族はほぼ下に見られていましたが母はボス猫として今後もずっと慕われていました。自分? 遊びたい全盛期が終わった頃から「遊んでやってる」って顔されながら遊んでいたので妹だと思っていたみたいです。「何時までも子供なんだから…」的な空気をよく感じました。

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それにしても…変なポーズの写真しかないわ…。

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2018年に諸事情により引っ越しをしました。猫にとって引っ越しは非常にストレスになる事は分かっていたのですが、人間側に止むを得ない事情があった為一緒に付いて来てもらいました。発病してからはこの時の事が無ければと悔いる事もありましたが、過去に戻っても変えられない決断だった為にどうしようもなく、かと言って諦めもつかず。我が家に来なければもっと長生きできたのではないかという思いはこれからもずっと引きずり続けるでしょう。

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家具はほぼ前の家から持ってきたので存外に早く馴染んでんでくれました。粗相もしなかったし賢い良い子でした。

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しかしこの新居にて、次々と平穏を揺るがす事件が起きます。
それは、近所の野良猫、半野良猫問題。
当然の様に家の周りを自分の縄張りだと思っているさば。しかし家族監視の元出かける散歩にて、家の周りで匂う他の猫のマーキング臭。
散歩中にばったり出くわす事もあり、その度に全力で威嚇し追い払う。でもさばは基本家猫の為、しばらくすると野良達は戻って来る。
家の周りで突然大きな物音が(猫が外の物を落とした音)したり、喧嘩が始まったり、ストレスの元になっているだろうなぁと心配になる有り様でした。
そして、2021年の春、最大の事件が。家の軒下で野良猫が子供を産みました。床下は毎晩大運動会。さばは寝れない日々を過ごしていました。


そんな折、さばに異変が。顎の下に膿の様な傷が出来たのです。

・挫創(ざそう)、通称猫ニキビ、猫アクネ
 顎や唇の周りにできやすい。症状が軽いうちは痛みもないが、進むと赤くなり腫れる。

同時に食欲もなくなり、口腔内も赤くなり、もしかしたら口まで貫通しているのでは、なんて心配になって動物病院へ向かいました。
診断としては、挫創と口内炎。別々の症状で、どちらも命には関わらない。食欲がない、という事は口内炎の痛みがあって気になるのだろう、という事で抗生物質と痛み止めを注射、挫創用の塗り薬を貰い帰宅。次の日から食欲は復活しました。

口内炎
 さばの場合は口内全体が赤く腫れていた。免疫が下がった事により自分の常在菌に反応してしまったらしい。多くは治る事のない慢性疾患。薬によって炎症を抑える治療を生涯続ける事になる。

しかし一週間程度の後、再び食欲が低下。医者に行くと、「二週間は効くはずの薬なんだけど、この子は効かない子なんだね」と言われました。ひとまず、最低中3日程度でも打てるそうなので食欲が無くなったら来院、という事で同じ注射をして帰宅。

そんな事が数回程あって、ある時さばが熱を出しました。
食欲もなかったので、病院に行って痛み止めと抗生物質を注射してもらいましたが、熱は引かず。熱のせいで食欲も戻らず。
ここで自分はぐーぐるさんに頼ります。挫創、口内炎、発熱。これらの症状を全て網羅する疾患とはなにか。

それが、FIVでした。

再び病院に行き、FIVに効くらしいインターフェロン(商品名インターキャット)の注射をお願いしました。…正確にはインターフェロンはカリシウイルス用の薬なのですが、注射の後、さばの熱はすっかり下がりました。
再び元気を取り戻し、ご飯食べるし遊ぶし、と絶好調のさば。しかしこの頃には、ある病名が診断されます。

・FIV関連症候群
 FIVの発症前に起きる免疫不全を原因とした様々な症状の総称。リンパの腫れ、口内炎、風邪、下痢、皮膚病等を発症する。特に口内炎の症状が出る事が多い。

関連症候群はまだFIVの前段階。発症した訳ではありませんが、これを調べると同時に突き付けられるのが発症後の寿命。

FIVを発症したら、余命は一ヶ月。

春に誕生日を迎え、8歳になったばかりでした。猫年齢で言えば高齢とはいえ、現代の猫の平均寿命からしてみればまだまだ。まだ、少なくとも10歳程度までは生きるものだとばかり思っていました。
あと、何か月も一緒にいられないかもしれない。それ以降、家族は外出を控え、写真を撮りまくり、残された時間を出来るだけ一緒に過ごそうとする様になりました。

そして、治療の方針と諦める時について話し合いました。
一度採血検査を行ったのですが、その時暴れて病院が(人間の)血の海になった事から、入院、手術はストレスになるのでやらない。安楽死はやらない。薬が効かなくなったら諦める。この三点を合意しました。

ある日、注射をしても食欲が戻らない、でも熱はないという時がありました。
病院に行って口内を覗くと、症状が進行していました。

・肉芽腫(にくげしゅ)、好酸球性肉芽腫症候群
 皮膚や口腔内に皮膚症状や潰瘍が出来る。主にアレルギー反応が原因で、治療が上手く行かない難治性となりやすい炎症を引き起こす。

さばの牙の周りが盛り上がり、餌を噛みづらい状態になっていました。先生曰く切除しても原因が不治だから取っても再発の可能性が高いとの事。薬で痛みを押さえ、何とか本人に頑張ってもらう事になりました。

さばは段々とよだれが酷くなりました。寝ていると下の布団やカーペットがだらだらと濡れ、そこから酷い臭いがしました。腐った餌の様な臭いです。
辛かったのが、餌を近づけるとよだれを垂らしながらも口は開かず、やがて顔を背ける事。食べたい、食べたいと目で訴えているのに、口が気になって食べられない。そんな事が、薬が切れる度にありました。

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段々じっと寝ている事が多くなり、ある日何も食べずに3日か4日いたところ、布団の上に黄色い謎の液体が。酸味のある臭いを漂わせるそれは、吐しゃ物、胃液でした。
しばらく空腹が続くと胃液が戻ってくるのだそうで、病院に駆け込み強めの注射と点滴を。それ以降、最後までもう胃液を吐く事はありませんでしたが、空腹が続くと口臭に酸っぱい臭いが加算されました。

ある日、注射をして家に帰ると、突然バクバクと勢い良くカリカリを食べだすさば。それからしばらく、何時もと同じ注射なのに長く食べる日々が続きました。どうやら、肉芽腫を避けて上手に食べる方法を見つけた模様。弱っている時はちゅーるばかり食べていたのに、それからはカリカリの方が食べやすいと主張し5食カリカリ三昧。
ですが、それも長くは続かず。症状は進行し、ベロが丸まる程腫れあがった肉芽腫。時折歯茎を噛んで、口から血を流す事もありました。

薬の副作用で皮膚は薄くなり、炎症のせいでズルズルと後ろ足を引きずりフラフラ歩き、薄暗い場所で寝てばかり。

ある時から抗生物質を止め、痛み止めだけの注射になりました。何でも抗生物質を続けて投与すると耐性菌の問題や糖尿病といった副作用が出るらしく、効果があまり見られないなら無理に投与するべきではないそうです。

カリカリは段々と食べられなくなり、ソフト餌も引っかかるのか食べづらく、チュールでさえ歯茎の隙間などに挟まって嫌がる様に。辛うじて食べはしますが、歯や肉の隙間に入った餌を逐一取ろうと必死にベロを動かす為直ぐに食べ疲れてストップ、でもお腹が空いているので二時間置きの給餌となりました。
それでも、食べる量は全然足りず。体重はどんどん減り、元気だった頃は3.5キロあったのですが、2.5キロまで減少しました。

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書き忘れていましたが、最初の挫創が出来た頃から目やにが増えました。この頃には茶色い涙も流す様になって、頻繁に目やにとよだれを拭いていた為ティッシュの消費が凄かったです。

10月。食欲はあまりないものの突然元気になって遊びまわったかと思ったら、ある日突然おもらしをする様になりました。というのも、足腰が弱り過ぎてトイレまでたどり着けなかった様子。そこから家に人がいる間は定期的にトイレまで運ぶ介護、寝る時と出かける時はおむつを履かせる習慣が出来ました。

ここで少し問題だったのが、痩せたせいでサイズがSSSだったので、近所に売っている店が無かった事です。そもそも猫用のおむつはほとんどなく、犬用おむつ女の子用(という名の犬猫兼用おむつ)を使用する事になりました。病院でも猫の粗相は珍しいと言われたので需要の問題だとは思いますが、いざ必要になってみると困るものです。多分これは…田舎の店の商品充実を願った方が良いのかな?

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そんな時期に最後の症状。命に関わるものではないものの、これもFIV関連症候群の一つだと思われます。

・肛門嚢炎(こうもんのうえん)、肛門嚢破裂
 初期症状としてお尻の穴の近辺が腫れる。肛門嚢という部分に細菌による炎症で膿が溜まり、やがて破裂する。お尻に大きな穴が開くので飼い主は慌てがちだが命に関わる病気ではない。猫もそんなに痛がらない。穴から膿を出し切り、抗生物質で細菌を除去するのが主な治療。

最初は慌てましたがこちらはそこまで深刻な問題にはならず、患部の清潔の為にさばのお尻の毛が刈られ丸見えになったくらいでした。止めていた抗生物質を再開し、帰宅。


が、薬の効きはどんどん弱くなり、とうとう中三日で注射に行くように。しかし11月、3日持たずに食欲がなくなります。
もう駄目かもしれないとは分かりつつ病院に。先生からも「看取りかもしれないね」と言われ、点滴だけで帰る事に。

それから飲まず食わずで5日、金曜日の夜中。親が家に帰ってきて、家族が揃って近くにいる中で、さばは息を引き取りました。何度も呼吸が止まりかけ、苦しそうに息継ぎをしていましたが、やがて動かなくなりました。最後の顔は目も口も開きっぱなしで、本当に辛そうで。楽に死なせてあげたかったという願いは叶いませんでした。
その時目が真っ黒で、何だこれと思ったのですが、死亡すると瞳孔が最大まで開かれるのだそうですね。
最初死んだ事が分からず、死亡確認の方法をぐーぐるさんで調べ、スマホのライトを目に当て動かない事を確認しました。自分は理解が追い付いていないのに理解していました。…頭の奥は真っ白だったのに、行動は嫌に冷静で、感情的になれない人間って嫌だなぁと思っていた次第です。

この時の体重は1.9キロ。享年8歳と半年。8か月もの闘病生活を頑張ってくれました。
素人の個人的な見立てですが、FIVは結局発症には至らなかったと思います。関連症候群の口内炎、それによる脱水症状が死因の筈です。

死亡したのが金曜日だった事もあり、遺体が腐る前にと日曜日にはペット霊園で火葬を行いました。親が仕事中に死んだら、出かけている時に死んだら、と不安な日々を過ごしていた為、あまりにも迷惑をかけない死に方に良い子過ぎて涙が出ました。
遺骨は持ち帰り今も一緒に家にいます。でも、鳴かない、動かない。ふかふかの毛に触る事も、餌の交換をする事も、来年の誕生日を迎える事もない。
まさかこんなに早く、別れが訪れるなんて。

ここ数日で大泣きは止まったのですが、しばらく作業ペースが落ちるのでマイクラも小説も次の更新は遅めになります。
あと、気持ち整理小説こと「君が死ぬまでの話。」の続編を書く事にしました。全編完成してから上げるので少し長めに空白期間が出ると思います。とまあ、この話は今は関係ないのでこのくらいで。


今回、猫の病気、症状は千差万別である事を実感しました。似たような症状に悩む飼い主様がいた時の為に、うちの猫の症例を細かく残しておこうと思ったのが筆を執った理由の一つです。
新しい症状が出る度にネットで調べものをしましたが、単体ずつなら獣医さんのホームページ等で説明があったのですが、FIV関連症候群の様に複数の症状が出る病気の解説は詳しい実例が中々見つからず苦労しました。さばは多少特殊な部類でしょうが、この記事が誰かの疑問を解消出来たら幸いです。

ペットが病気になった時、どこまで頑張らせるか、頑張るかは飼い主に一任されます。その選択に後悔しない、なんて事はあり得ません。どんな最後だって、その先に涙が無いなんて事はあり得ません。
この子は家に来て、本当に幸せだっただろうか。言葉が通じない以上その答えをくれる相手はおらず、飼い主は永遠にこの問いに苦しめ続けられるでしょう。
それでも、悲しみに上書きされる前に、幸せな思い出はたくさんあった筈です。写真を見返す度に、思い出せる筈です。

何時かさばとの思い出を笑って話せる様になるまで、どれだけ時間がかかるかは分からないけれど。

私は君に会えて良かった。幸せだった。


最後に、亡くなる直前に撮ったさばの写真を載せて終わりたいと思います。
何時か、虹の橋の下で会うその日まで、さようなら、ありがとう。

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