暇潰し備忘録

気まぐれに更新する何でも日記

ニジカノ小説秋編なのですよー。

グリム熱が昨日から再発しました。天空カイ君の絶対領域眺めてニヤニヤしています。
何を隠そう自分、クーデレが大好物でして、ど真ん中ストレート三振バッターアウトでして。
クールで可愛い男の子っていいですよね、個人的に主人公とカイ君は女の子と同じ扱いをしております。


さて、本題です。ニジカノ小説が書きあがったので投下します。
修正無し一発書きなのでいろいろと荒いですが、趣味なので多めに見ていただけるとありがたいです。

ここから始まります↓

 平日の台所。トントントン、ジュージュー……と美味しそうな音が聞こえている。

 そう、音だけは、美味しそうな……。

「このお店のハロウィン限定ケーキ、おいしそうじゃない? 毎朝あいつの枕元に置いて催促してみたら、気を利かせて買ってきてくれたり、なんてないかしら……って、焦げくさっ、カラン!?」

「ひぇぇ、何ですかこの煙……火事ですかぁ……!?」

 台所の扉を開けた瞬間、真っ黒な煙が二人の顔にかかった。咳ばらいをしながらも必死に手で煙を払うと、その先にはエプロンを着けた小さな影があった。

「ああ……安心してくれ、火事ではない」

 振り返った華藍は、頬を煤けさせ、苦い表情を浮かべている。その手には包丁、手前には一口大に切られた鶏肉と、謎の黒い塊と、黒い塊の山。ついでにその隣のジュージューという鍋が煙の元凶となっていた。

「……大惨事ね」

「え、と……その炭の山は、いったい……?」

「これは、その……」

「説明の前にコンロの火を止めなさい。中身、完全に焦げてるわよ」

「ああ、すまない……」

 カチリ、とつまみを捻る。音は静かになったが、煙が収まるまでは少しかかりそうだ。

「……で、どうしたのカラン、あなたが料理だなんて、あたしたちにも何も言わずに」

「う、む……その、秘密の特訓を、しようと思ってだな……」

 バツが悪そうに目を反らし、もごもごと言い訳をする華藍。

「もう、すっかり秋だろう。皆で紅葉を見に行きたいと思ってな、行楽弁当を……手作り出来たら、と思ったのだが……面目ない」

 赤くなった顔を隠すように、『手作りお弁当レシピ百選』と書かれた本を胸に掲げる。

 華藍は自他共に認める料理下手だ。我が家で唯一の料理下手だ。しかし、「他の人に頼めばいいのに」なんて言葉を、思っても口に出す人間はいない。

 大切な人に手作りのご飯をごちそうしたいという思いは、全てのニジカノが持つものだろう。カノジョ達にはよくわかる。

 ハァ、と溜め息を吐いて、似鳥はマイエプロンを装着した。

「一先ず、そこの炭になったの片付けるわよ。狭いキッチンじゃ作業しづらいでしょ」

「すまない……ボクが不甲斐ないばかりに」

「誰だって最初はこんなものよ。それより、出来ない事する時は一人で抱え込もうとしない事。何のためのあたし達だと思ってるの?」

「ありがとう、ニトリ……」

「フーリン、あんたの作業場足りないから、予備のテーブル持ってきなさい」

「ふぁっ、はい、そうですね、い、行ってきますぅ!」

 てきぱきと片付けを始める似鳥と、わたわたと廊下に出る風鈴。レシピ本を抱え立ち尽くしている華藍も叱咤し、台所は見る見るうちに料理をするのに相応しい清潔さを取り戻していった。

「それじゃあ、お弁当の中身はおにぎり、からあげ、卵焼き、ほうれん草のお浸しね。あたしの秘伝のレシピを伝授するわ。ほら、その本仕舞って」

 腕まくりを整え直し、ノールックで指示する似鳥。本を仕舞いながら、「メモのようなものがどこにも見当たらないが……」と華藍は不安そうに辺りを見回す。

「さ、まずは基本の卵焼きよ! あ、フーリン、そっちは手伝わなくても出来るわよね?」

「は、はいぃ、味見だけしていただければ大丈夫ですぅ……」

「……フーリンは一体何を作るんだ?」

「は、はい、ハロウィンが近いので、皆さんに配るお菓子の試作をするんですぅ。食紅で血みたいに真っ赤なクッキーを作るんですよぉ……うふ、ふふふふふ……」

 小麦粉を振るいにかけながら、光のない目で笑う風鈴。背筋に寒気を感じ、華藍はそっと会話を打ち切った。

「……あんな性格だったか?」

「ああ、あの子今ヤンデレの勉強中なのよ」

「なるほど」

 似鳥は食材と道具を取り出し、キッチンに丁寧に並べる。その中の一つ、長方形のフライパンを手に取り、華藍は首を傾げた。

「これはなんだ? 叩くための道具か?」

「卵焼き用フライパン……知らないの? それを使えば、普通のフライパンより簡単に綺麗な形に出来るのよ」

 「まずはお手本ね」と華藍からフライパンを受け取り、似鳥は調理を始めた。

 卵を手に取り、コンコン、パカッと流れるような動きで二個ボウルに割り入れる。出汁と砂糖を入れ、菜箸で切るように混ぜる。あまりの手早さに残像が見える……と華藍は驚愕していた。

 白身と黄身が綺麗に混ざったら、フライパンに薄く油を引き火を点ける。

「慣れないうちはあまりフライパンが温かくないうちに入れるといいかもね。卵は直ぐ固まるから、半熟くらいで巻き始めるのがコツよ」

 お玉一杯の卵液を流し入れると、じゅわぁ……と心地よい音が鳴る。フライパンに均一に広げ、縁に出来た小さな泡がパチパチというくらいで、フライ返しで端をめくり始める。

「こ、こんなに生でいいのか? 裏も全然焼けていないじゃないか……!」

「いいのよ、卵なんて生でも食べられるじゃない。それより、完全に固まってから巻くと、くっつかなくてバラバラでスカスカな卵焼きになっちゃうから気を付けなさい」

 くるくると器用に半熟の卵を巻き、手前に寄せて、空いたスペースに卵液を注ぐ。最初の卵を少し浮かせ、追加した分と馴染ませる。

「あとはひたすら繰り返しよ。カランはいつも焦がしちゃうから、とにかく早めに行動するようにね」

「う、うむ……」

 みるみるうちに大きくなる卵の塊を、華藍は「手品のようだ……」と目を丸くして見つめる。横目で見ていた風鈴が、「自分もやるってわかっているんでしょうか……」と心配そうに呟いた。

「焼きあがったら……伝家の宝刀、簀巻きの登場よ!」

 コンロの火を止め、似鳥はシャラランと簾のようなものを開いて見せた。

「形がうまく作れない……そんな時も大丈夫! 簀巻きの上にラップを載せて、そこにアツアツの卵焼きを載せて、巻いて、整形! 四角い卵焼きも、丸い卵焼きも自由自在よ!」

 きゅっきゅっと卵焼きの入った簀巻きを握る。開くと、お弁当に入っているあの長方形の卵焼きになっていた。

「おお……! 流石はニトリだ!」

「こんなの基本よ、カランだって直ぐ出来るようになるわ、あたしが教えてあげるんだからね!」

「頼もしい! ……あれをボクがするのか?」

「? 当たり前じゃない、何のためのデモンストレーションよ」

「……む、無理だ! あんな華麗な動き、ボクには出来ない!」

「だから練習するんでしょう。ほら、いくわよ、卵よーい!」

「イエス、サー! ……じゃない、うわ、やめ、わぁぁぁああ……!」

 似鳥に無理やり料理を開始させられる華藍に、風鈴は心の中でこっそりと手を合わせた――。

 

「……うっ、ぐす、スパルタだ……鬼教官だ……」

「今度は上手に焼けたじゃない、綺麗な黄色よ! 数時間前まで消し炭を作っていた人が焼いたとは思えないわ!」

「び、微妙に褒めていないようなぁ……」

 色も形も様々な卵の塊が山積みにされた隣で、簀巻きの上に鎮座する『卵焼き』。猛特訓の末、華藍がアドバイスを受けながらも一人で作り上げたものだ。

 「さ、味見してみましょう」と似鳥が包丁を手渡す。温かくフルフルする黄金色の卵焼きを、一口大に切り分ける。

 口に入れると、ほんのり卵と砂糖の甘みが広がった。

「……苦くない、焦げ臭くない……!」

「うん、ばっちりじゃない! ねえ、フーリン?」

「は、はい、とっても美味しいですぅ……!」

 いつの間にかこちらに混ざっていた風鈴も感嘆の声を上げる。華藍は涙を滲ませ、似鳥の手を取った。

「ありがとう、ニトリ。我が師よ、心の友よ……!」

「なっ、なに泣いてるのよ! お弁当の道はまだ始まったばかりじゃない! まだまだ特訓は続くわよ!」

「本当にありが……うん? ま、まだあの鬼のような訓練が……!?」

「今度はからあげよ、難易度がぐんと上がるんだから!」

「ひっ……だ、誰か助け……」

「カラン、お弁当は一日にして成らずよ!」

「ど、どうかご勘弁をぉ!」

 再び特訓を始めた二人からそっと離れ、風鈴はオーブンに入れたクッキーの様子を見に行った。

「我を誘うこの甘美な香りは何だ……(いい匂いがする……)?」

「あ、おはようございますぅ、ライトちゃん。クッキーもう直ぐ焼けますよぉ……あっ、卵焼きどうぞ、カランさんが作ったんですよぉ」

暗黒物質の創造主が? 食べられるの?(あの料理下手なカランお姉ちゃんが食べられるもの作ったの?)」

「はい、美味しいですよぉ」

「いただこう……ん、おいひぃ!」

 目を輝かせる月に、そうでしょうと微笑む風鈴。

「そのうちもっと美味しいお料理をカランさんが作ってくれますよぉ……」

 と、コンロの方を振り向く。そこには阿鼻叫喚しながら油と戦う二人の姿。

風鈴と月は、そっと見なかったことにした。

「……血と涙の結晶なのだな……(すごく頑張ったんだね……)」

「はい……出来上がったら、美味しそうに食べてあげましょうね……あ」

 ピー、ピー、ピーとオーブンが鳴る。出てきたクッキーを見て、月はあまりの毒々しさにキャラも忘れ泣き出したのだった。

「カランお姉ちゃんより、フウリンお兄ちゃんの料理の方がヤバイよー!」

 

 すっかり暖色に染まった森林公園。レジャーシートを広げ、五人で座る。

 大きな御重に喜ぶ主人公。「カランが作ったのよ」と似鳥が言うと、少し顔が引きつった。

 躊躇う華藍を、皆が後押しする。

 蓋を開けると、墨色ではない、色とりどりのおかずが並んでいた。

「き、キミの為に、その、頑張って練習したんだ。皆から、美味しいとお墨付きも貰っている。……食べて、くれるか?」

 不安そうに、そう言うカノジョ。もちろん、と頷き箸を伸ばす。

 美味しい、と言うと、カノジョは花が咲いたように笑った。

 木々が枯れ始める秋。どこか物悲しい季節も、カノジョ達と一緒なら毎日が春の様に心が弾む。

 ――そう、それこそまさに、ニジイロの日々だ。

                                    終わり。

 
 
上手い事を言おうとして失敗するやつです。

まあ、今回はこれだけという事で。

ではまた(・ω・)ノシ